研究概要 |
工学機器において,混合,伝熱,化学反応等の促進のための基本的な手段として噴流が用いられてきた.制御しなければならない流れ場が従来に比べ多様化し,機器の大幅な負荷変動に柔軟に対応すること,あるいは機器のコンパクト化,微小化にあわせた効率的な噴流による混合手法の開発が求められている.本研究では従来手法のような噴流自身の不安定性に依存するのでなく噴流を強制的に制御する能動制御に着目し,その一方法として噴流を周期的に振動させるベクトル制御を提案した.ベクトル制御噴流のDNS(Direct Numerical Simulation)を行った結果,加振周波数を変えることにより波状モード,分岐モード,フラッピングモードへとフローパターンが大きく変化し,いずれの場合も制御方向へ大きく拡散すること,統計エントロピーによる混合指標を用いて混合状態を評価した結果,分岐モードで大幅な混合促進効果が得られることが確かめられ,提案する手法の有効性が定量的に明らかにされた.多数のパラメータを含む制御特性の効率的な評価を行うためには高精度な低次モデルの開発が必要である.低次化の手法として最新の構造分析手法であるDMD法(Dynamic Mode Decomposition Method)について検討した.従来から多用されているSnapshot POD法(POD:Proper Orthogonal Decomposition)では瞬時の渦構造と関連性の深いモードの抽出が困難であったがDMD法では可能であること,DMD法で抽出された制御噴流の上位モードは加振周波数に対応したモードであることから励起が主要な渦構造の形成に寄与していることが明らかにされた.このことからDMD法は低次化のための構造抽出方法として可能性の高い方法であることを見出した.
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