研究概要 |
本研究では,表面近傍の細菌運動の3次元観察法の確立を第一目的としている.従来,微生物の運動速度や軌跡を調べる際には,スライドグラスとカバーグラスの間に封入された少量の懸濁液を顕微鏡下で観察する方法がとられている.この計測では2次元的な運動情報が得られる,しかし,表面近傍への集積を調べるためには,3次元的な運動を把握することが不可避となる.そのため,通常の顕微鏡観察に加えて,側面からの同期観察(直接的方法)を実施する. 本年度は,(1)境界近傍での細菌運動にともなう変形の観察を試行し,(2)細菌運動の2方向同時撮影像から位置および姿勢を求めるプログラムの開発を始めた. (1)蛍光観察装置と映像記録用のカメラを導入し,自由表面近傍での細菌運動に伴うべん毛の変形の2次元観察を開始した.べん毛繊維は直径30nm程度,長さ5μm程度と極めて微小なため,蛍光撮影をしても撮影条件を整えるのが非常に困難であり,人の目では確認できる現象が映像には記録できないという問題を抱えている.しかし,試験的な映像を得ることができ,べん毛繊維や菌体とべん毛をつなぐフックが変形している様子を捉えることができた. (2)明視野観察による2方向同時撮影像から細菌の位置および姿勢を求めるプログラムの開発に着手した.細菌の菌体はほぼ楕円形に近い形状をしているため,画像処理により菌体形状を抽出して楕円に近似し,長軸の端の2次元座標を出力するプログラムを作成した.現在,2方向からの画像を用いて,3次元座標を取得する部分を作成している.
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