表面近傍での微生物運動は,バイオフィルム形成と関連し,湖沼や海洋あるいは生体内の環境と密接に関わる.本研究を含む一連の研究では,細菌の表面への接近と集積を予測するためのモデルを作成することを目的としている.同期した2台の高速度カメラを用いて2方向同時顕微鏡観察を行い,表面近くでの細菌の位置と姿勢を同時に得た.データ取得時間を短縮するため,画像処理による自動計測,顕微鏡ステージの自動制御などの要素技術の開発を行った. 本年度は,以下の2点に重点をおいた. 1.2方向同時顕微鏡観察による細菌の位置と姿勢の把握 2方向からの同期した画像を用いることにより,単毛性細菌Vibrio alginolyticusが界面に近づいていき,円状の軌跡を描くときの位置と姿勢を取得することができた.これは,数値解析で得られていた界面近傍の運動と定性的には一致している.また,菌体を楕円近似して位置と姿勢を推定するプログラムを用いて,同じ映像からそれらの値を自動的に推定した.プログラムを利用することにより,位置と姿勢の取得時間が大幅に減少する. 2.対象物を視野内に納め続けるトラッキング顕微鏡の試作 電動XYステージを顕微鏡に装着し,画像処理とステージの制御を組み合わせてトラッキング顕微鏡を試作した.回転運動している渦鞭毛藻Symbiodiniumを対象として,顕微鏡視野内に納めることができることを確認した.ステージの制御時間が律束段階になっているので,ステージの移動回数を減らすような方法をとっている.
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