プラズマシンセティックジェットアクチュエーター(以下PSJA)とはオゾン発生装置などに使われるバリア放電現象を使った流れ誘起装置であり、機械的稼動部を持たず、耐久性・応答性が高いことから近年注目を集めているデバイスである。PSJAの作動原理は未だ完全には解明されていないが、誘電力を間欠的に作動流体に与えることにより流れを誘起するシンセティックジェットの一種であることは広く認識されるようになってきた。筆者らはPSJAによる流れ制御で剥離抑制や乱流摩擦応力低減が可能であることを実験および数値シミュレーションで示してきた。これらの研究をもとに、PSJAの幾何学的形状と流れ誘起特性の関係を解明し、流れ制御アクチュエータとしての性能を向上させることが本研究の目的である。 22年度は主流の状況が変化しても追従可能な制御手法を見出すため、極値探索法(Extremum Seeking)を使った適応制御実験を行った。その結果、極値と思われる状態に自動的に制御パラメータを収束させることが可能であることが分かった。しかし、極値はパラメータ可変範囲に唯一つ存在するわけではなく、大局的最適値に収束するとは限らないことも分かった。また、極値探索には数秒の時間を要しており、それよりも早い流れ状況の変化には追従できない事も分かった。今後、応答性の改善方法に関して研究を続ける必要がある。 PSJAは高電圧交流を電極に引火して流れを誘起するため、各種電子機器に対して電磁気干渉(EMI)を起こすことが懸念された。そこで、当初購入予定であった6軸力センサーの替わりに購入したスペクトラムアナライザーにより、3m遠方での電界強度測定を行った。その結果、PSJAが発する放射ノイズはパーソナルコンピュータ、携帯電話(待ち受け状態)と同程度であり、電磁レンジと比較すると十分小さい事が確認された。よって、今後PSJAを電子機器等に組み込んで実用化する際にも、既存のEMI対策技術が応用できると考えられる。
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