研究課題
当該研究は,食物連鎖の下層を支えている比較的小さな動植物が,他の動物などの餌となりながらも,進化の歴史を通じて種として生きながらえている基本的な原理を,生命が脅かされるような極限状況下にさらされた場合に示す運動と運動器官の形態構造の関連性から流体力学的に解析・究明することを目的として研究を進めた。さらに,その成果をバイオマイクロメカニズムの構築に応用する研究も展開した。研究の成果として,通常では考えられないような,微小生物の特別な運動機能および巧妙な運動器官の存在が明らかとなった。比較的サイズの小さい陸上のトビムシや海洋中のアミなど小型の動物は食物連鎖の最下位にあり,より大きな動物の餌となるのが通常である。また,微小生物では重力に逆らう飛行の限界・重力から解放されている遊泳の優位性・直線移動の不可能な歩行の劣勢の境界が,低レイノルズ数領域となるために判然としなくなる。これらの微小生物は,捕食動物の接近をいち早く察知し,異常なほど高速で逃避する。これら微小生物の挙動が力学的に解析され,極限状況下での運動メカニズムが当該研究で解明された。たとえば,体長が1 mmのトビムシが捕食動物のアリの接近を察知して,体長の数百倍もの高さまで高速で移動するが,その跳躍が特殊な器官を使用して実現可能な事,体の回転を利用した跳躍の仕方で抗力を減少させていることなどが解明され,そのメカニズムに倣うマイクロ跳躍メカニズムが試作され,その特性も明らかにされた。他にも,mmオーダーの双翅目昆虫が重力にさからって横向き飛行を行えることが明らかにされ,これまでの揚力生成機構とは異なる原理が見出された。さらに,それら微小生物のマイクロ振動機構に倣う,微小磁石,コイル,磁性流体を利用した世界に類例を見ない,高周波数においても液体駆動が可能なマイクロメカニズムを数種類試作し,それらの駆動特性も明らかにした。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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