研究初年度として、実施計画に従い、レーザ誘起熱音響波測定系(以下、「LITA測定系」)および平面衝撃波測定装置(以下、「小型衝撃波管」)の設計・製作ならびに、予備実験を行った。LITA測定系に必要な2種の光源は、東北大学流体科学研究所学際衝撃波研究拠点に設置されているピコ秒パルスNd : YAGレーザ(波長1064nm、パルス幅100ps)および半導体励起連続Nd : YAGレーザ(波長532nm)を利用した。極めて非定常な温度変化を示す衝撃波背後温度場の計測に先立ち、測定精度検証のための予備実験として室内大気温度計測を実施した。良好な信号光が得られ、熱電対による指示値と比較したところ差は2%であった。この値は、研究代表者が過去に実施したものと同等である。続いて、非定常高レイノルズ数流れの発生源として小型衝撃波管を設計・製作した。小型衝撃波管は、それぞれ□56mmの正方形断面を有する高圧室(長さ500mm)、中圧室(長さ150mm)、低圧室(長さ1000mm)の3室構成である。高圧室と低圧室間の小体積の中圧室により、2重隔膜式とした。高圧室圧力と低圧室圧力(本研究では主に大気圧)の中間の圧力に中圧室を保ち、これを大気開放することで2重隔膜を任意の時刻に破膜させ、衝撃波を発生させる。衝撃波管の特性は衝撃波発生を理想化した単純衝撃波管理論によって説明されるが、装置個々の特性は予測できない。そこで、小型衝撃波管の基礎特性(高圧室と低圧室に充てんする気体の圧力比と発生する衝撃波Mach数の関係、本研究では、高圧室、低圧室に充てんする気体は共に空気)を予備実験により取得した。これにより、破膜後、衝撃波が測定部への到達時刻が1マイクロ秒程度の精度で決定できる。したがって、LITA測定系と小型衝撃波管を組み合わせることで衝撃波背後に誘起される温度場の瞬時計測実験への準備が整った。
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