研究概要 |
キャビテーション気泡が崩壊する際に生ずる高い衝撃圧力を利用するため,水中ウォータージェット装置などが開発され,幅広く応用されているが,数多くの微細気泡を含むキャビテーション流れの内部を直接観察することが難しく,キャビテーション流れの構造は未だ十分に解明されていない.本研究では,数値流体力学の手法を用いてキャビテーションを伴う水中ウォータージェットの構造を理論的に解明するため,高速キャビテーション流れの実用解法を考案し,気泡間および気泡・液体の相互作用を見積もってキャビテーション気泡流の圧縮性混合流解法を構築した.さらに,キャビテーション気泡の影響を考慮した乱流渦粘性の修正を取り入れ,高速キャビテーション流れの実用解法を確立した. 上記キャビテーション流れの実用解法を用いて,オリフィス・ノズルによる水中ウォータージェットの数値シミュレーションを行い,オリフィスにおける高レイノルズ数非定常キャビテーション流れの特性を調べた.その結果,キャビテーション数の低減にしたがって,オリフィス入口壁面近傍のせん断層でキャビテーションが初生し,発達したキャビテーション気泡群がジェットせん断層に沿って周期的に下流へ放出することが分かった.キャビテーション数の低減にしたがって,キャビテーションの強さを示す局所最大ボイド率及び領域平均ボイド率が高くなり,ジェット噴射の質量流量係数が減少することを確認した.また,高速キャビテーション噴流実験装置にてオリフィス・ノズルによるキャビテーション噴流の可視化実験を行い,キャビテーション数が0.2から0.02まで(現実験装置の調整可能範囲)変化させて,キャビテーション噴流の振る舞いを高速度ビデオカメラで観察し,ジェット噴射の質量流量係数の変化を測定した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水中キャビテーションジェット流れ構造の解明について,ベンチューリノズルおよびオリフィスノズルを用いて可視化実験を行い,キャビテーション数によって流量係数の変化,キャビテーションの発生位置とボイド率分布を調べる予定であったが,東日本大震災の影響で実験用ノズルの加工等が遅れ,キャビテーション数が0.02~0.2との範囲だけで実験を行った.今年,キャビテーション数が0.3~1.2の範囲で流量係数の変化とキャビテーション気泡雲ボイド率の分布を計測し,その関連を明らかにする.また,ノズルの最適解析についても,数値計算に要する時間が予想よりも長く,予定よりやや遅れている.
|