本研究の目的は、環不知火海における自然環境の保全と改善に寄与するために、不知火海の海流調査法を提供することであり、(1)不知火海の海流をリアルタイムで計測する、(2)定水深浮遊体および実験水槽を開発する、(3)一定水深の不知火海の海流情報を提供する、(4)球磨川の淡水流入による海中への影響を推定することである。 本年度は、昨年度までの研究から得られた定水深浮遊体の制御手法および通信機能を用いて、浮遊体の動作状況を屋内実験水槽において確認すると共に、実際の自然海において実験を行い、海流データを取得した。(a)屋内密閉水槽での浮遊体の動作確認について: 電波通信を用いて水槽外部のパソコンと水槽内の浮遊体機器とのデータ送受信を可能にしているので、水槽外のパソコンに収集したデータと水槽内の浮遊体に搭載した機器とのデータを対比することにより、浮遊体内のデータの信頼性を確認しており、本研究の実験効率が格段に向上した。(b)浮遊体の定水深維持について: 浮遊体の給排水量と水深とに比例制御を用いて、設定水深近くの潜水と浮上の振れ幅は小さくなったが、波による定水深維持を確認するには不十分であるため、模擬的に海面波の通過(高低)による海中の圧力変化を構成できる実験装置を追加して本環境での浮遊体の挙動を確認でき、定水深維持のための制御方法を緻密に検討可能とした。(c)自然海における潮流計測について: ほぼ無風で波高が小さい状況における計測実験の結果、小潮時において海面と海中での流れ方向がかなり異なる流れが認められ、閉鎖浅海域における潮流の複雑さが窺がえた。一方、大潮の時には海面および海中の流れ方向はほぼ一致し、その流速も早く、潮流への潮汐の影響が支配的であった。
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