研究概要 |
ボクセル法を用いた鼻腔内気流シミュレーションを行い,鼻腔の形状や気流の特徴を捉えるために必要なボクセル格子の細分化について検討した.医療用CT画像500枚から鼻腔を含む頭部の3次元ポリゴンモデルを再構築し,ボクセルピッチを0.1から1.5mmの範囲で変化させて鼻腔のバイナリボクセルモデルを作成した.気流のシミュレーションには,3次元非定常熱流体ソルバーV-Sphere(理化学研究所VCADシステム研究プログラム)を使用した.その結果,鼻腔内の流れの特徴を表す圧力損失や流量分配等の定量的指標が,ボクセルピッチ0.2mm程度以下でほぼ一定値となることがわかった. シミュレーション結果の妥当性を検証するために,2倍スケールの透明シリコーン樹脂製の鼻腔流路を作製し,染料注入による鼻腔内流れの可視化を行った.シリコーン樹脂流路はラピットプロトタイピング造形による鼻腔の3次元ロストモデルを使用して作製した,作動流体には,シリコーン樹脂流路と屈折率の等しい体積濃度50%のグリセリン水溶液を使用した.可視化実験では,鼻腔内の鼻前庭部に渦や再循環領域の発生を伴う特徴ある流れのパターンが観測され,またこのような流れの基本的なパターンはボクセルシミュレーションでよく再現されていることが確認された可視化実験では,鼻腔上部の嗅覚部や下部の鼻甲介付近において流れの不安定性,非定常性や乱れが生じることもわかった.
|