冷凍サイクルにおいて,熱交換器の伝熱性能は,圧縮機や膨張機から冷媒とともに吐き出される冷凍機油の混入により大きく低下するため,熱交換器効率の向上のためには,高性能な油分離器により圧縮機や膨張機から吐出される油量を低減することが求められている.しかし,冷媒とともにシェル内に吐出された油は細かなミストとなっているため,従来用いられている遠心式や重力式の油分離器では,微小なオイルミストの分離は困難であった.本研究では,微小なオイルミストの分離に対して,オイルミストを帯電させ,クーロン力によって分離する方法について検討した. 圧縮機シェル内のミスト挙動に関しては,圧縮機シェル内に吐き出される油量解析モデルを開発し,設計および運転パラメータがシェル内に吐き出される油量に及ぼす影響を明らかにするとともに,大気圧下での試験においてミストの発生にはウェーバ数より気液の見かけ流速比の影響が大きいことや,シェル内で発生するミスト径が数ミクロン程度であることが分かった. 一方,クーロン力を利用した油分離器の開発に関しては,冷媒雰囲気中では大気中に比べてコロナ放電が起きづらく,圧力が高くなるに従って放電開始電圧は上昇するが,冷媒雰囲気中でもコロナ放電により油滴は帯電し,クーロン力による分離が可能であることが確認できた.また,油滴発生時に誘導帯電により帯電させた場合には,より低電圧でも分離可能であり,誘導帯電が圧縮機内のミストに対して適用できれば,クーロン力による油分離がより容易であることが明らかとなった.また,PAG油などの極性の大きな油の場合には,分極により油滴が変形し,電極と接触することによって帯電・分離される様子も観察された.これらの研究成果により,冷媒圧縮機における微小なオイルミストの分離に対し,実現可能性を示すことができた.
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