水素燃焼の利点は燃料である水素が水として地球上に無尽蔵に存在すること,また燃焼過程で地球温暖化物質であるCO2を排出しないことである.しかし,水素燃焼は燃焼速度が大きく,爆発の危険性を伴う.このため,安全な燃焼器の使用が不可欠である.本研究では安全な水素燃焼器の開発を目的に,旋回パイロット火炎を副室型とする旋回噴流燃焼器の開発を行った. ついで,水素炉内燃焼の評価を行った.炉内燃焼は炉内に形成される循環渦による既燃ガス希釈の影響を強く受ける.このため,燃焼器と炉内径の組み合わせが重要となる.そこで,炉内径を可変型とし,炉内燃焼の評価を1)炉内燃焼の可視化,2)濃度場,3)温度場の項目について調査した. 実験より以下の結論を得た.1)噴流火炎のみでは吹き消えに至る噴流空気流速においても旋回噴流火炎では吹き消えは起こらず安定な火炎が形成された.2)燃焼器内の火炎は中心から噴流火炎,中間火炎,旋回火炎が形成された.3)噴流火炎と中間火炎の間には噴流空気の冷却効果に基づく温度極小値が存在した.火炎の安定範囲を広げるためには温度極小値を上させる必要のあることが判明した.4)3)の結果に基づき,噴流空気ノズルをマルチノズル型に変更した.この結果,噴流火炎と中間火炎の間の温度極小値は解消され,大幅に火炎安定範囲が増大した. 以上の研究成果を国際会議,国内講演会で発表するとともに学術雑誌に論文として公表した.
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