研究概要 |
本研究は,圧縮着火機関に予混合圧縮自着火燃焼の原理を適用し,過大な圧力上昇率を避けながら高効率で低環境負荷の運転を保障するため,燃焼制御の拠り所となる指標の開発を目指している.前年度において,着火時点での燃料噴霧全体の平均燃料質量分率にもとづく着火性指標を提案した.本年度はこの指標に汎用性を持たせるため,噴霧内の濃度不均一の性質とそれが着火・燃焼過程に及ぼす影響を明らかにするための研究を実施した. まず,前年度まで収集したデータに相当する燃焼条件において,LESによる数値解析を行い,噴霧内の濃度の分布,ならびに濃度分布と着火の化学反応の進展との関係を検討し,平均的な濃度とともに,濃度の頻度分布が着火の過程に及ぼす影響を明らかにした. また,これまでに単成分燃料について開発した,レーザ誘起蛍光法にもとづく混合気濃度分布の定量化手法を拡張し,蒸発性の大きく異なる二つの成分それぞれの濃度分布を定量化する手法を検討し,定容燃焼装置内の不活性高圧雰囲気中に作成した非定常噴霧において検証を行った.燃料液滴からの散乱光による干渉などの問題点が判明したが,より実際燃料に近い条件で噴霧内濃度不均一の時間的変化を明らかにできる見込みが得られた.さらに,二つの成分を種々に組み合わせた燃料について定容燃焼装置内で燃焼実験を行い,成分の蒸発性や化学反応における特性の違いが,噴霧の着火にどのように影響するかを検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度には,「能動制御指標」として,着火時点での燃料噴霧全体の平均燃料質量分率にもとづく着火性指標を提案した.平均量を使ったこの指標に,平均からのばらつき,すなわち混合気濃度の不均一の影響を織り込むことを狙いとし,今年度は,濃度不均一の性質と,それが着火・燃焼に与える影響を検討することとした.検討には,数値計算手法(LES),二成分燃料噴霧の濃度定量化,などの新規な方法の開発が必要であったが,精度上の問題が少し残り適用可能な燃焼条件がやや限られたものの,これを用いた濃度不均一の評価を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに,能動制御指標の骨子の提案,および提案した指標の改良に関わる検討の基本部分が終了した.今後は,改良の検討のため,さらに実測データを充実させる.そのために,数値解析手法,濃度分布定量化手法の問題点を解決し,幅広い燃焼条件への適用を可能とする.得られた実験データや数値解析の結果を総合して,穏やかでかつ環境影響物質の排出を極小とする燃焼を実現する制御の指針を案出する予定である.
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