研究概要 |
薄膜蒸発伝熱特性に及ぼす液供給条件や蒸発面構造の影響の基礎データを取得し,薄膜蒸発に適した条件を見出すことを目的で,基礎研究としてモデル伝熱実験を行ない,応用技術開発として2ケースの実用条件を考慮した伝熱実験を行なった. 1.基礎研究:平成22年度に高い伝熱特性を有すること明らかになったメッシュ付き面について,積層枚数を変えた3種類の構造を用い,泡による液膜供給の液供給量を変えたモデル蒸発伝熱実験(作動流体は水,伝熱面はヒータによる加熱した銅面,周囲条件は飽和水蒸気)を行なった.その結果,構造条件ごとに最適な液供給量が異なり,積層枚数が1層と2層の多孔構造伝熱面が同程度に最大伝熱特性を有することを明らかにした。 2.応用技術開発:(1)局所的に熱流束が大きい伝熱面モデル(電子機器冷却への応用)について,実用条件(高発熱部の寸法が100mm)にて3種類の液供給方法と蒸発伝熱特性を伝熱実験(周囲条件は大気)により検討し,表面張力作用を利用する積層多層流路供給方法は実用条件でも平成22年度に行った小さい寸法と同程度に高い特性にできることを明らかにした.(2)熱流束が小さく広い伝熱面積の伝熱面モデル(太陽熱コレクターへの応用)について,伝熱面を多孔質構造にして局所的な液供給による液膜を伝熱面全体に広げる作用をもたせて,外部からのふく射加熱方式および内部ヒータ加熱方式の蒸発伝熱実験(周囲条件は大気)により検討し,その結果で多孔質層厚さをできるだけ薄くすることが有効であることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見をもとに,蒸発伝熱特性をさらに増大し,また実用条件での特性の増大を実現する. 1.基礎研究:今後,さらに液供給条件や蒸発面構造を適正化し,蒸発伝熱特性の増大技術について検討を進める予定である. 2.応用技術開発:今後,実用上での制約も考えて,電子機器冷却・太陽熱コレクター装置での伝熱面へ最適な液分配制御の方法について,システム全体の観点から検討を進める予定である.
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