研究概要 |
本年度は,直接噴射式ディーゼル機関の圧縮比を18から14へ低下させ,さらに,点火プラグを設置し,高着火性および高気化性を有する単組成の脂肪酸メチルエステルであるラウリン酸メチルエステルを燃料として用いて,燃焼特性調査を行った. 実験では,まず,火花放電を行うための適正条件の把握を行った.その結果,低圧縮比条件下で,ラウリン酸メチルエステルは,軽油同様に着火遅れが長くなるが,軽油と同じ着火遅れであっても,熱発生開始後,素早く熱発生率がピークに達し,その後,急激に低下することがわかった.このために,遅い噴射時期でも,発熱の等容度が低下しないため,軽油運転のような熱効率の低下は生じないこと,外部EGR(排ガス再循環)を行って着火遅れを長くとっても,軽油運転時に比べて低温酸化による熱発生量が多くなり,そのため,軽油運転時に比べて熱炎の開始時期が早まること,低圧縮比と外部EGRを併用すると,排気中の窒素酸化物NOxと微粒子PMの相反関係や,PM中の可溶有機成分SOFと全未燃炭化水素THCの相反関係が,それぞれ軽油運転時に比べて改善されることなどが明らかになった. つぎに,火花放電に適すると思われる早期噴射における運転条件のもので,火花放電実験を行った.その結果,放電による燃焼促進効果は認められなかった.これは,予混合気が超希薄であるため,通常の放電エネルギーでは燃焼誘起ラジカルを生成しないためと推察された.今後は,放電エネルギーと着火希薄限界の把握,放電エネルギー増加の効果等の検討を行う.
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