研究概要 |
本研究は石油枯渇後をにらんだ、高性能DME〈ジメチルエーテル〉燃料エンジンを実現するための基礎研究である。DMEが単一成分燃料であることから、そのポテンシャルを最大限に生かす点に特色がある。そのなかで、DMEを噴射装置内で超臨界にして、これをシリンダ内に噴射・燃焼させ飛躍的に性能向上を目指すのが、本研究の独創的なところである。これまでのDME燃料エンジンの研究は軽油の代替燃料という位置づけ、つまり、軽油用のディーゼルエンジンがDMEで問題なく運転できることを実証することに重きがおかれていたのとは、目標のレベルが大きく異なる。 初年度にあたる平成22年度は、 第1実験:DMEが超臨界状態になっている噴射装置内の流動解明((1)窒素で加圧したDMEをさらにポンプで加圧しオイルバスで加温して、超臨界圧力・温度にする。(2)開弁圧がコントロールできるハンドテスターにインジェクターを取り付けて、これを通じて大気に噴射する.(3)このときの噴射系内の圧力の時間的変化を測定する) 第2実験:超臨界DMEが燃焼室内に噴射されて形成される噴霧特性(分散性、貫徹性、微粒化性)の解明(噴霧の形状を高速度ビデオで観察するとともに、外部に設けた点火装置でDME-空気混合気の着火範囲を測定する)の2つの実験を中心に研究を進めた。 この研究のポイントは、超臨界DMEの噴霧に、超臨界特有の現象が現われるかどうかである。この観点からの代表的成果として、DME噴流の到達距離Lと噴射開始からの時間経過tの間には,L=Kt^<1/2>の関係があり、本実験の観察からKの値を算出したところ、圧縮液ではほぼ一定値K=2.2の値をとり,超臨界状態ではK=1.9となった。つまり、臨界点を境にKの値に段階的な差があることが示された。
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