研究概要 |
低温機器の熱交換器に付着する霜層は熱抵抗層であるとともに流動抵抗の増大の原因ともなり,熱交換器の効率向上のためには,着霜の低減化を実現する必要がある.今年度の大きな成果は,霜層の掻き取り力を大幅に減少させることに成功したことである.この成功により,冷却面温度を低温度に維持したまま機械的除霜を行うことが可能となった. 着霜の低減化に有効な条件を見出すために,冷却面表面のぬれ性および冷却面表面の微細加工の影響を検討した.結果として,冷却面表面のぬれ性の影響は,ぬれ難い面が着霜の低減化に効果があることを確認した.しかし,着霜現象を評価する諸量である着霜量および霜層厚さに及ぼす冷却面表面のぬれ性の影響は顕著ではなく,低減化の効果は熱交換器の効率を大幅に向上させるものでは無いことが硫認できた.一方,霜層の掻き取り力は,撥水処理(静置水滴の接触角=103゜)を施した冷却面で半減する効果が確認できた.次に,冷却面表面に微細な溝加工を施し,冷却面表面性状を変化させた.溝加工の寸法は過冷却液滴と同程度または数倍の大きさとした.霜結晶の生成・成長機構を把握するため,槻察システムを構築し,観察した結果,凸部表面から霜結晶が成長し凹部には霜結晶は付着していないことが確認できた。さらに,霜層の掻き取り力を測定した結果,鏡面仕上げした銅製平板から成長する霜層の掻き取り力と比較して数十パーセントの掻き取り力であることが明らかとなった.この掻き取り力は,噴流を用いて除霜するジェット除霜で冷却面表面に付着する霜層を除去することが可能な値である. 現在,寒冷地仕様のヒートポンプでは,冷却面表面を氷の融点である0℃よりも高い温度に上げることによって霜層を融かす除霜が行われているが,本研究の成果を熱交換器に利用した場合,効率の向上が実現できるだけではなく,機械的に除霜した霜結晶を蓄冷材として利用する利霜も可能となる.
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