研究概要 |
霜結晶の生成・成長機構を把握することを目的として,冷却面表面温度を変化させ,顕微鏡撮影を行った.さらに,冷却面表面性状を変化させることによって霜結晶の制御および抑制する方法を検討した.まず,冷却面表面をぬれ難くすることによって霜結晶の付着力を低減化できることが確認できた.しかし,ジェット除霜等の機械的な除霜が可能な程度の低減化は実現できないことも明らかとなった.次に,表面に0.1mm程度の微細な溝加工を施すことによって冷却面表面性状を変化させ,霜結晶の生成・成長機構の観察を行った.平成22年度に霜結晶が生成しない領域を実現することに成功し,その領域は全面積の50%であったが,平成23年度は格子状の溝加工を施すことによって,霜結晶が生成しない領域を75%まで拡大することに成功した.霜結晶の付着力を掻き取り力として評価した場合の測定値は,表面処理を施していない場合の値と比較して1/4程度にまで減少しており,機械的除霜が実現できる程度にまで霜層の掻き取り力を低減化することに成功したと考えている.観察結果に基づき,霜結晶の生成・成長機構をモデル化した. 着霜現象に影響を及ぼす因子として,空気温度の影響を検討した.プレハブ冷蔵庫を用いて空気温度の条件を広範囲に変化させ,実験値を取得するとともに,計算値と比較し,計算に用いたモデルが妥当であることを確認した.着霜現象に及ぼす冷却面表面性状の影響も実験的に検討した結果,微細な溝加工を施すことによって,霜層厚さ及び着霜量の低減化が確認できた.また,着霜時の熱移動量には顕著な変化がないことも確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
冷却面表面に微細な溝加工を施すことによって,霜結晶が実現しない領域があることを見出した.このような現象は,報告者らの知る限りでは見受けられない.今年度は,この領域を75%まで拡大することができ,霜結晶の生成機構を制御し,結晶成長を抑制することが可能になったと考えている.冷却面表面性状を変化させる方法として,冷却面表面のぬれ性を変化させる方法や自然界に存在する菌を利用する方法が検討されているが,本研究で得られた効果は確認できなかった.さらに,着霜現象を系統的に理解するために必要な測定結果も,冷却面温度が0℃から-40℃の領域では,ほぼ測定を終え,実験値と計算値との対応も良好であった.
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