表面を微細加工し,みかけの表面性状を変化させた冷却面表面を用いて,自然対流下における鉛直平面系での実験および数値計算を行った.結果として,平滑面と比較して,霜層厚さが20~25%,着霜量が25%,霜層の掻き取り力が80~85%低減することが分かった.一方,熱移動量に関しては,顕著な変化は無いことが分かった.したがって,物質移動量を減少させ,熱移動量を維持することを実現できた.数値計算の結果,微細加工面表面には微細な渦が発生しており,この渦の存在が物質移動に影響を及ぼしているものと判断した.本研究成果は,冷却面表面温度を低温度に維持したまま,空気噴流等で霜層を機械的に除去することに応用が可能であり,この機械的除霜システムが実用化できた場合,熱交換器の効率が向上し,省エネルギーを実現できる. 寒冷地仕様のヒートポンプを普及させるために,COPの向上が求められているが,微細加工面を用いた実験は,自然対流下だけではなく,強制対流下でも行い,低温・低湿度の強制対流下における実験においても,自然対流下の実験で得られた結果と同様の霜結晶生成機構の抑制および結晶成長の抑制が実現できることも確認した. 最後に,冷却面表面性状の影響に関する検討を行い,冷却面表面のぬれ性の影響は無視できないこと,および霜結晶の付着力に及ぼす影響が顕著であることを確認した.しかし,現状は,低温機器の冷却面表面のぬれ性を変化させても,ぬれ性を長期間保持することは困難であることが分かった.この問題は,自然界に存在する無害の菌を利用した表面処理に関しても同様のことが言える.
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