研究概要 |
本研究は,利用されず捨てられている各種排熱の回収と利用促進に資することを念頭に,繊維状金属を熱交換器流路内に拡散接合設置した新規な熱交換器要素の基礎性能を調べ,その機構を解明することを目的とする.本研究の特徴は,熱交換面に拡散接合法を用いて繊維状金属を設置することにあり,壁面の熱抵抗を可能な限り減らし,同時に金属の高熱伝導性により熱を積極的に伝えることを狙う.熱交換面の伝熱量を,繊維状金属を設置しない場合に比して10倍高めることが到達目標である. 本年度はアルミを材料とする繊維状金属に着目し,安定した要素の作成方法,拡散接合法の検討を行った.そして熱交換用の実験装置を製作した.熱交換面には温度測定用のセンサを局所的に設置し,局所熱伝達率の流れ方向分布の測定も可能にした.圧力損失の増加を同時に取得できるよう静圧孔を設置した.その上で,数種類の繊維状金属を設置する場合について熱交換と圧力損失測定の予備実験を行った.得られた主な結果は以下の通りである. ・熱交換要素の製作方法について,良好な条件と製作上の技術ノウハウを蓄積した.また,製作した要素の断面を観察する方法と性状を定量的に把握する方法について指針を得た. ・予備実験で得られた最も良好な要素の熱交換性能は,繊維状金属を設置しない場合に比して,テスト部の上流端で8倍程度となった.なお,その性能は下流へと向かうにつれて低下することが分かった. ・圧力損失の予備実験では,これまでの他者の研究に比して高い値となった.今後は,熱交換と圧力損失を同時に加味した総合評価を行う必要があること,また圧力損失増加を低減する工夫が必要なことが分かった. 次年度は熱交換に関する本実験を行うとともに,熱交換性能に及ぼす設置方法の影響を調べる.また,熱交換機構のモデル化について,数値解析を援用しながら検討する計画である.
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