研究概要 |
本研究では,熱交換器による排熱回収の高性能化に資するために,流路内にファインメタル(繊維状金属)を設置する場合の伝熱促進について,主として実験的な研究を行う.熱交換面からの熱は繊維状金属内を熱伝導により伝わり,そしてその表面から対流により熱交換流体に伝わる・本研究は,繊維状金属内部の良好な熱伝導を使って,流体により近い位置まで熱を伝え,伝熱面の熱交換促進を狙うものであり,物体を設置しない場合に対して10倍の伝熱促進を達成することが目標である.本年度は,昨年度に引き続き,接合方法と流路の空隙率を変更し,伝熱実験と圧力損失実験を行いデータの拡充に努めた.また,金属繊維要素の熱伝導率測定実験を行った.加えて熱移動経路の理解の一助として金属物体を設置した流路の3次元数値解析の予備検討を行った.得られた成果は,次のとおりである. ・空隙率81.5%のアルミ繊維状金属を配した流路では,設置しない滑面に対し,上流端で最大8.1倍の伝熱促進が得られた.最下流でも最大5倍の伝熱促進を達成した. ・拡散接合を用いた繊維状金属の伝熱面への設置は,それを行わない場合に対して,圧力損失増加は不変であった.伝熱促進は約1,5倍に達し,より有効であることが分かった. ・産業的によく使用されるロウ付けによる設置は,ロウ材が接地面に広がるため金属の接地面が大きく,拡散接合に比べ高い伝熱促進が達成できる.しかし,同時に圧力損失が大きくなり,圧力損失の増加を含めた総合性能は,拡散接合による設置とほぼ同等である. ・試験に供したアルミ繊維状金属の有効熱伝導率は,他者の繊維状金属の結果と同程度であり,他者の代表的な発泡金属より小さい値であった. ・数値解析の結果,作動流体の違い(空気,水)によって,金属物体内部の熱伝導の寄与が異なり,熱移動の経路とその量は大きく異なることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は,3年の間に,熱交換面の伝熱量を,ファインメタル(繊維状金属)を設置しない場合に比して10倍高めることにある.本年度は8.1倍の伝熱促進を達成した.繊維状金属は異方性を有し,これを利用すれば熱伝導率性はさらに上がると見込まれ,次年度は目標の数値を達成可能であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
具体的な数値目標を達成するために,今後取組むべき課題は,繊維状金属の異方性を利用した更なる伝熱促進方法の模索であり,次年度はかかる点の実験的データの取得を積極的に行う.他方,より学術的な視点に立てば,また実際の応用展開を考えると,このような熱伝導媒体を利用した熱移動促進方法が,利用可能な作動流体の熱伝達能力とどのように関係するかを理解することが重要と考える.繊維状金属はその点で極めて複雑であり,形状を単純化し関係性の本質を明確に理解する検討が必要であり,この点の変更を検討中である.
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