研究課題/領域番号 |
22560220
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
不破 勝彦 大同大学, 情報学部, 准教授 (70324481)
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キーワード | データ欠損 / 遠隔制御系 / 空間分割 / 外乱抑制 / 零点配置 |
研究概要 |
本年度は「データ欠損が存在してもその影響を受けない遠隔制御系の実現」の目的に対し、1.実現アルゴリズムの開発、2.実験装置の整備ならびにモデル化、を計画していた。その成果を以下に記述する。 1.実現アルゴリズムの開発・・・上三角化の考え方を応用して、入力空間を分割するためのプログラム表現までは実現できていたので、リアルタイムシミュレータによる実装を行なった。シミュレーションを通じて、制御対象のパラメータによらず空間分割できることが解明された。制御対象のパラメータと制御器のそれとが混在する設計条件から、制御則を導出しやすくする点で重要な成果であると考えている。成果は計測自動制御学会中部支部教育工学論文集で発表した。また、昨年度、零点がデータ欠損の影響を制御系へ現われない役割を担うことを明らかにしたが、生産現場等で多用されている速度型PID制御でその零点が配置できるようにした。PID化は、制御器の実装上の簡便化・低コスト化の点で意義深い。成果は平成23年度電気関係学会東海支部連合大会で発表(一部、計測自動制御学会論文集に掲載決定)した。 2.実験装置の整備ならびにモデル化・・・柔軟梁の両端に制御用のアクチュエータと加速度センサが配備された実験装置の製作を行なった。モデル化を行なうため、周波数解析装置を使って、アクチュエータから加速度センサまでの周波数特性を測定した。その際、未知なる外乱や雑音を考慮した推定器を設計し、前置フィルタを考慮した最適レギュレータで閉ループ同定を行なう方法を検討した。ここでも空間分割の技術を活用し、外因性信号の影響を受けない状態推定と前置フィルタで測定したい周波数特性を任意に指定できるようになった点は意義深い。成果は平成23年度電気関係学会東海支部連合大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大きく3つの理由がある。1.制御対象のパラメータと制御器のそれとが混在した設計条件になっているので、試行錯誤により制御器を求めなければならず時間を要したため。2.外因性信号が、予想以上に実験装置のモデル化に対して悪影響を及ぼした。当初、緩衝増幅器にフィルタを結合して対処する予定であったが、良好な結果が得られなかった。そこで、当初予定していなかった外因性信号の影響を受けない状態推定と前置フィルタで測定したい周波数特性を任意に指定できる最適レギュレータの研究を進めたため。3.データ欠損と零点との関係が明らかとなったため、PID制御による制御則実現に関する研究が予想以上に進展したため。なお、リアルタイムシミュレータに実装する上で、制御器の簡便化は必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
推進方策として、実現アルゴリズムを使って制御器を実現し、実験より通信遅れ、容量低下、データ欠損を発生させてその影響が制御性能に現われないことで制御器の有効性を評価したい。 問題点とその対応策については以下2点がある。1.制御対象のパラメータと制御器のそれとが混在した設計条件になっているため、制御対象のパラメータによらず空間分割できる昨年度の結果を踏まえ、できるだけ試行錯誤から脱却した設計条件になるようにしたい。2.外因性信号がモデル化に悪影響を及ぼし、精度の高いモデルが得られていない。そこで、外因性信号の影響を受けない新しい推定器と最適レギュレータの併合系で閉ループ同定を行なうことを検討したい。
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