研究概要 |
二酸化炭素排出量の削減目標,原油価格の高騰などの背景や,バッテリーの技術革新などにより,電気自動車への関心が高まっている.本研究では,モータ駆動の特性を反映した精密な制駆動力配分をエネルギーの観点から検討する.航続距離の延長などを含め,電気自動車への関心の要因となっているエネルギー節減効果の特長を伸ばすために,タイヤ/路面間のスリップに着目し,駆動時のロス低減や,回生制動時の発電効率向上のための方策を探り,その効果評価を行う.平成22年の成果に基づいて,平成23年度は,次のような観点から研究を続行した.タイヤ/路面間のスリップによるエネルギー損失の定量評価が実現しているため,本年度は転がり摩擦の影響まで考慮して,より精密な評価を試みた.直線上の加減速については,ブラシモデルにより加速度とスリップ率の関係を求めて,エネルギー損失とその最小化について検討している.前輪駆動,後輪駆動の各駆動方式において,加減速による荷重移動,ブラシモデルにより記述される,輪荷重,路面摩擦係数,車軸のトルク,スリップ率間で成立する関係式を用いて,加減速時のエネルギー損失について定量評価を実現した.上記の方針を応用し,四輪駆動車両について,所定の目標加速度のもとで,タイヤ/路面間でのエネルギー損失を最小化する最適な制駆動力配分について検討した.これらの検討結果を基にして,1kWhの電力量で走行できる航続距離を10-15モードに相当する計算条件で評価することも行った.航続距離にはよくいわれるように転がり摩擦の影響があるが,同時にドライビング/ブレーキングスティフネスの寄与も無視できない.定常円旋回する車両のエネルギー損失率の定量評価についても検討を行い,これを最小化するための配分パターンについて調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請に記した計画に沿って,直進中の加減速に伴うエネルギー損失の定量評価と,評価に基づいて損失を最小化するためのスリップ率制御,さらに回生制動やモーターやインバータなどのエネルギー効率を考慮するなどした.単位電力量により走行可能な距離などが現実的な走行条件のもとで評価できるようになった.その一方,定常的旋回においてのエネルギー消費について評価方法とそれを最小化するための配分パターンについても検討できた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,(i)直線上の加減速や定常旋回から,旋回半径や速度が時間変化する状況を含めてエネルギー消費とその低減へ向けて操舵と制駆動力配分について考察する.(ii)操縦安定性を優先する通常の制駆動力配分におけるエネルギー消費との対比で,エネルギー消費低減を優先する制御の特性を探求する.(iii)ユーザインタフェースとの関連性で,電気エネルギーの無用な消費を抑えてながら,快適な運転を実現させるための基本的な設計方針について検討する.本年度が最終年度となるため,海外の国際会議への参加,論文執筆と学術雑誌への投稿準備などにも時間を配分していく.
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