本研究では、路面からの入力を模擬する6自由度モーション装置と、自動車のサスペンション部品およびタイヤを利用することによって、自動車の走行状況を再現する試験環境を開発し、サスペンション特性が車両の運動性能に及ぼす影響を精度よく評価することを目的としている。 2010年度の研究実績としては、先ずスチュワートプラットフォーム式6自由度モーション装置の動特性について、評価と改善を行った。装置の動特性を補償するフィルタを用いることにより、15Hz程度までの上下動をモーション装置によって精度良く再現可能であることを明らかにした。 装置に用いる車両モデルについては、車体の剛体6自由度およびサスペンションの上下ストローク4自由度を考慮した計10自由度車両モデルを用いて、1ms周期のリアルタイム解析が安定して実現出来ることを確認した。また、車両運動解析の精度をさらに向上させるため、サスペンションの構成要素の個々の運動を考慮するマルチボディ車両モデルの適用を検討した。マルチボディ車両モデルを用いた運動解析では、大規模な行列演算が必要とされるため、多くの計算量が要求される。本研究では、行列演算ライブラリSuperLUを用いて計算効率の向上を図ることにより、4ms周期のリアルタイム解析を実現することができた。 タイヤに回転を与える転動装置については、従来よりローラ式転動装置を利用していたが、タイヤ接地面の再現性を向上するために、新たにフラットベルト式転動装置の開発を行った。このフラットベルト式転動装置を用いた計測結果より、タイヤコーナリングフォースおよびセルフアライニングトルクの再現性が向上したことを確認した。
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