本研究は、路面からの入力を模擬する6自由度モーション装置と自動車のサスペンション部品およびタイヤを利用することによって、自動車の走行状況を再現する試験環境を開発し、サスペンション特性が車両の運動性能に及ぼす影響を精度よく評価することを目的としたものである。 平成24年度の研究実績として、前年度までに構築したHardware In the Loop Simulation (HILS) システムに改良を加え、リアルタイム車両運動解析における解析速度の向上と、安定性の確保を試みた。 従来のシステムでは、単一の計算機においてハードウェアの制御とリアルタイム車両運動解析を実行していたが、これらの処理を別々の計算機で行い、RS422通信により制御および解析に必要な情報をやり取りするシステムを構築した。併せて、行列演算ライブラリを適用することにより、リアルタイム車両運動解析におけるマルチボディダイナミクス解析の実行周期の向上を図った。これらの改良により、実行周期を1msとしたリアルタイム車両運動解析が実現された。 また、このシステムは実際に計測される物理量に基づきリアルタイム解析が実行されるため、計測情報の離散化やノイズの影響により、安定性が低下することが懸念される。そこで、Baumgarteの安定化手法と呼ばれるマルチボディダイナミクス解析の一手法を導入し、さらに試験条件や数値積分ソルバに応じてBaumgarteの安定化手法のパラメータを調整することにより、リアルタイム解析の安定性向上を試みた。
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