研究概要 |
音響レンダリングは,CGにおけるレンダリングと同様に形状データ等を基に3次元音響空間をコンピュータ上に構築し,臨場感あふれる音響情報を提供する技術である。特に,本研究グループでは,コンサートホールのような大規模な音響空間をリアルタイムでレンダリングする"シリコンコンサートホール(SiCH)"の実現を目指している。SiCHでは,レンダリング手法にディジタルホイヘンスモデル(DHM)法や時間領域差分法(FDTD)法を採用しているが,これら差分系の数値解析手法では伝搬波長が空間サンプリング周波数に近づくに伴い,数値分散誤差が顕著に現れることが知られている。本研究では,これらの数値分散誤差の軽減法と高速化手法の開発を目的としている。 まず,数値分散誤差の軽減法として,今年度は散乱体が存在しない大部分の内部空間に境界積分方程式(BIE)法を適用し,周辺境界付近については波動音響解析手法を適用する結合解析手法を2次元音場について実装した。本手法ではBIE法をCPUに実装し,FDTD法をGPUに実装することで高速化が可能となっている。その結果,1回反射については全空間をFDTD法で計算する場合に比べ結合解析手法は精度が良いことが示された。また,数値分散誤差が再生音に与える影響についても検討し,サンプリング周波数がCDサンプリング(44.1kHz)程度であれば,誤差成分の周波数帯域が聴覚の範囲を超えるため,誤差がほとんど気にならないことも確認された。
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