研究概要 |
実際の走行状態に近づけるためドラム径をタイヤ径の2倍(従来は1/3)にし,支持機構の剛性もアップさせた動的特性計測装置(大径ドラム)を用いた転動実験により回転時の動的特性(上下・前後方向)について調べ,従来の動的特性計測装置(小径ドラム)での結果との比較検討を行った.また,加振実験により振動特性の変化についても調べた.更に,小型マイクによる近接音計測でのタイヤ挙動計測方法を確立し,共振時の振動モードの特定が可能となり固有振動モードとの比較を行った.得られた結果から,タイヤ単体の振動特性が回転時の動的特性に及ぼす影響について調べた結果,以下の知見が得られた. 1. 上下方向・前後方向共に共振周波数が小径ドラムに比べ大径ドラムの方が高くなることが判明した.更に小径ドラムでは共振周波数は上下・前後共に1個だったのに対し,大径ドラムでは前後方向の共振周波数が3個に増えた. 2. タイヤ接地時の振動特性はタイヤ単体の剛性だけではなく支持系の剛性の影響も受け,大径ドラムの方が小径ドラムに比べて固有振動数が高くなることが判明した.更に大径ドラムでは実際の接地状態に近づいたことにより1次の剛体モードに割れが発生し,それに伴って前後方向に振動するモードが3個存在することが確認でき,このことが大径ドラムで前後方向の共振周波数が3個に増えたことに対応していることが判明した. 3. 小型マイクによる近接音計測結果と従来の車軸の歪計測結果を比較した結果,近接音計測でもタイヤの挙動を評価できることが判明した.そこでタイヤ周りに7か所小型マイク配置し近接音を同時計測することにより共振時の振動モードを特定した.共振時の振動モードと固有振動モードと比較した結果,非常に良く対応していることが判明し,接地時の固有振動数と転動時の共振周波数との相関が明確に裏付けられた.
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今後の研究の推進方策 |
タイヤを円環でモデル化しタイヤーホイール系での定式化を行い,起振力(入力)とホイール中心の動的応答(出力)間の伝達関数をモード展開法を用いて求める.更にラプラス逆変換と畳み込み積分を行うことにより,任意の入力(起振力)に対する出力(動的応答)の解が定まるので,転動実験での動的応答の結果から起振力を逆算することが出来る.また,円環モデルばね定数や曲げ剛性等のパラメータは,加振実験で得られた固有振動数から同定することによりタイヤの固有振動特性を考慮した起振力の同定が可能となる.
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