研究概要 |
本研究では,高度な技術,高品質,短納期などが要求される単品鋳物製品に関する鋳造や機械加工工程を技能伝承事例として取り上げ,ものづくりの技能伝承における身体知獲得過程の脳科学的分析およびその工学的応用について検討を行った.ヒューマンインターフェイス分野,脳科学分野等の知見をもとに,ものづくりにおける技能伝承の基礎的研究と応用的研究を行うとともに,ものづくり現場での実践的検証を行い,技能伝承の高度化を図ることを研究目的としている.平成22年度においては,以下の研究成果を得たので報告する. (1)注湯作業用力触覚提示装置の設計および製作 多関節型ロボットアームと触覚用グローブから注湯作業用力覚提示装置を開発した.これにより,注湯用とりべ(炉からでる溶湯をうけ運搬や鋳込みを行う容器)をクレーンで運搬する感覚や,溶湯を鋳型に鋳込む作業を体験できた. (2)リアルタイム鋳込みシミュレータの開発 鋳型に高温の解けた金属を流し込む作業が注湯である.この作業では鋳込み速度が非常に重要である.鋳込みを適切な速度で行うためには,鋳型内での湯流れの様子を理解している必要がある.しかし,経験の浅い技能者にとって鋳型内の湯流れを想像することは困難である.そこで本研究では,注湯作業訓練を行うためのリアルタイム鋳込みシミュレータを開発した.本研究では湯を粒子とし,粒子法を簡略化した手法を開発し,これを用いてリアルタイムで解析した.VR技術を用いて,湯流れを3次元立体映像で表示することで,湯流れのイメージを簡単に把握することが可能となった. (3)fNIRS(機能的近赤外分光脳計測装置)および視線計測等の統合計測システムの開発 fNIRSおよび視線計測装置により,統合脳機能計測システムを構築した.そのシステムにより,ものづくり作業者の脳賦活反応と視線を同時計測できることを確認し,本格的な計測システム開発のための準備を整えた.
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