研究概要 |
パワーアシストシステムは高齢社会に必需となりうるが,その操作性については評価及び性能向上が難しいとされてきた.心理学の分野では,物体の重量知覚特性について解析されてきたおり,物体のサイズや質感により変化すると言われているが,パワーアシストにより物体を移動させた際の人間の重量知覚特性については研究例がない.本研究の目的は,パワーアシスト操作時の人間の重量知覚特性を解析し,それを考慮したパワーアシスト制御系設計手法を確立し,従来のシステムに比べて格段に操作性を向上させることである. 研究代表者は,平成22年度において,垂直1自由度に拘束された物体と拘束されていない物体の重量知覚特性を調べた結果,拘束された物体の方が軽く感じることを発見した.これにより垂直1自由度に拘束されたパワーアシストシステムでは,自由度を拘束することによる影響が存在することが分かった. 平成23年度までは平成22年度の知見を利用して,高応答ボールねじシステム及び力センサーを利用して新たな実験システムを設計,試作した.これにより,操作ストロークが従来では150mmであったものが,500mmまでに,また,操作力が1kgであったものを5kgまで拡大することができた.また,これを制御するためのコンピュータとのインターフェース,ソフトウェアの構築を行い,実験環境を整備した.次に,当該システムを利用して,従来の研究結果である「パワーアシストされていない物体に比べ,パワーアシストされた物体の方が軽く感じる」が同様に得られるかを確認した.その結果,従来の結果同様,制御系の遅れにより先に示した重量知覚が影響されることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成22年度において,試作予定であった高応答のアシストシステムを平成23年度に試作したため,その部分に遅れて生じている.これは,平成22年度に拘束された物体の重量知覚特性を調べたためであり,この結果を利用しないと新たな試作機を設計,製作できなかったためである.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では平成22年度に1次元高応答システムを構築し,平成23年度に2次元システムを構築する予定であったが,平成22年度に1次元システムを設計する上で,自由度拘束と重量知覚特性との関係が必要となったため,1次元システムの構築は平成23年度となった.さらに,平成23年度において,パワーアシスト制御系構築において,位置制御ベース,力制御ベース,2つの制御手法の比較が必要であることが分かり,これについては,平成24年度に実施することとした.当初の計画では最終年度に生体信号を用いた心理的負担の評価を計画しており,従って,平成24年度では1自由度システムを用いて,制御系手法の評価と心理的負担評価を実施する予定である.
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