研究概要 |
全方向・全方位について力覚情報を提示するシステムを開発するに当たり,力覚を検知するセンサの開発が不可欠となる.本年度はこれまで1軸の力情報しか検出できなかった微細作業システムを多軸で力検出を可能にする3軸小型力覚センサの開発を行った.本機は走査型電子顕微鏡の真空チャンバー内で使用するため,コンパクトかつ真空仕様でなくてはならない.センサは一体構造型で半導体歪ゲージを用いており,各軸の出力特性は,X軸は1.49×10^<-2>[N/100μst],Y軸は1.14×10^<-2>[N/100μst]Z軸は1.17×10^<-2>[N/100μst]となっている.各軸の干渉成分はいずれも10%以下と低く方向分離性能は高いため,干渉成分除去のための較正行列を使わなくても直接各軸よりフィードバック信号を取ることが可能である.このセンサを微細作業装置に搭載して検証実験を行った.半月状の凹みを設けたシリコン基板上で,凹み形状に倣ってプローブを操作しハプティックデバイス(SensAble社製PHANToM)にフィードバックして力覚が正しく提示されるかどうかを計測した.その結果押し込み力(Z軸)だけでなく摩擦力方向(X軸,Y軸)も検出できることを確認できた.この際の力覚提示の拡大率はZ軸で約200倍である.通信遅延を含む遠隔操作については,マレーシアのマレーシア工科大学・人工知能ロボット研究所のAdha Imam Cahyadi博士と共同で長時間の通信遅延が存在する状況下での遠隔制御システムの安定性に関する理論的研究を進めており,その成果の一部は既に雑誌に投稿済みである.
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