不整地走行用の装軌車両を自律的に移動させるための不整地における自律走行手法の確立を目的とし、路面からの抗力と滑りを考慮した装軌車両の自己位置推定手法の構築、走行時に発生する履板の滑りを補償する走行制御手法の構築を行った。本年度は、3軸加速度センサ5個、1軸ジャイロセンサ3個を搭載した装軌車両型実験機を用い、構築した手法による走行制御実験を行った。走行時の実験機の実際の位置は実験機に搭載したRTK-GNSS受信機により取得し、推定位置と比較した。実験により、土質パラメータがあまり変化していないと思われる路面では、推定位置から算出される経路に対して追従性が概ね良好であることが確認できたが、土質パラメータが大きく変化していると思われる場所では、シミュレーション同様大幅に経路への追従性能が低下することがわかった。土質パラメータの推定値を反映する制御ゲイン調整器の構築が今後の課題として残る。一方、推定位置に関しては、土質パラメータがあまり変化していない路面では良好な推定値が得られることが確認できたが、土質パラメータが大きく変化している場所では推定誤差が大きくなる場合があった。これは車体の角加速度の推定誤差に起因するものと考えられる。土質パラメータの変化が大きい場所では履板の滑りが大きくなり、車体に発生する角加速度も大きくなる。構築した自己位置推定手法は車両の推定角加速度も利用するが、角加速度の推定は複数の加速度センサの取り付け誤差の影響を大きく受ける。このことから、加速度センサの取り付け精度が自己位置推定の精度に大きく関わることがわかった。したがって、センサの取り付け誤差をキャリブレートする機能を自己位置推定に内包する必要があり、この点も今後の課題として残る。
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