研究概要 |
(1)形状記憶材料をアクチュエータとして用いる場合の最大の課題は,記憶形状を発生させたのち如何に元の形状に戻すかである.本研究ではこの方法として,ガラス遷移点(Tg)の異なる2つの形状記憶ポリマーの薄膜を用い,一方に記憶させたい形状,もう一方にはこれと逆の形状を与え,最初に生じた記憶形状を2回目に生ずる記憶形状でキャンセルさせる方法を検討した.Tgが35℃と55℃の2種類の形状記憶ポリマー(ポリウレタン系)を用いて片持ち梁型アクチュエータの試作を行い,発生した記憶形状をキャンセルさせ発生前の形状に戻すことができることを確認した. またより簡単な構造で記憶形状を元の形状に戻す方法として,基板の弾性復元力を利用する方法も検討し,ポリイミドシート(基板)と形状記憶ポリマーの薄膜からなる片持ち梁構造において,基板の弾性復元力を用いて元の形状に復元できることも確認した. (2)アクチュエータの形態を梁およびダイアフラムとして形状記憶ポリマーの薄膜により試作し,薄膜の加工条件,駆動源である温度とそれにより発生す変位の関係,形状記憶ポリマー薄膜の膜厚と発生変位および発生力などの基本特性を把握できた. (3)形状記憶材料の駆動源は温度であり,そのためアクチュエータとして動作させるためには加熱機能が必要である.そこでこれをMEMSとして一体化するために,ポリイミドシートを基板として形状記憶ポリマーの薄膜を塗布した前記片持ち梁アクチュエータにおいて,基板の一方の側に薄膜アルミニウム配線を形成し,これに通電することで温度をコントロールする方法を検討した.試作から本方法の有効性と,アクチュエータのマルチ加工やアレイ化への展開も容易にできることが確認できた. 以上により,1年目に計画したアクチュエータの動作原理の有効性,基本動作特性の把握等をほぼ予定通り実施することができた.
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