研究概要 |
形状記憶材料をアクチュエータに応用する場合の課題は,形状記憶効果が一方向性のため,繰返し動作をさせるためには記憶形状発生後にいかに発生前の形状に戻すかである.本研究ではこの方法として,ガラス遷移点(Tg)の異なる2つの形状記憶ポリマーの薄膜を用い,一方に記憶させたい形状,もう一方にはこれと逆の形状を与え,最初に生じた記憶形状を2回目に生ずる記憶形状でキャンセルさせることを提案した.本研究内容は,その動作原理の検証およびこの方法の応用に関するものである. H23年度では以下を実施した. (1)Tgが35℃と55℃の2種類の形状記憶ポリマー(ポリウレタン系)を用いてダイアフラム型のアクチュエータの試作を行い,このタイプにおいて提案した動作原理が有効であることを確認した. (2)形状記憶材料の駆動源は温度であり,そのためアクチュエータとしてコントロールするためには加熱機能が必要である.この機能をMEMSとしてアクチュエータと一体化するために,(1)で記述したダイアフラム型アクチュエータにおいて,通電加熱用の薄膜アルミニウム膜を複合形成し,これに通電することで温度をコントロールすることが可能であることを確認した.また本試作・評価から本方法を用いてのアクチュエータのアレイ化への展開ができると考えられ,次年度の研究テーマの一部とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した動作方法の確認をH22年度に行い,H23年度は駆動力とする加熱源をアクチュエータと一体化することができた.この加熱源とアクチュエータからなるユニットにより,外部加熱によらない自己完結型にすることができた.なお,加熱源は金属薄膜の通電で行う方式を採用し,加熱により形状記憶ポリマーが焼損してしまうことがないような構造を工夫した.
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今後の研究の推進方策 |
H23年度に製作した形状記憶ポリマーの加熱源をより効率化するため,カーボンナノチューブ(CNT)を応用することを検討する.CNTを用いることにより,構造体の変形を低下させることなく,効率的に加熱・放熱が行えるものと期待している.CNTを用いた加熱源をダイアフラム型のアクチュエータに搭載して,動作特性を検討する.
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