(1)触診した肩こりの度合いを標準化する目的でサンプルモデルを試作し,施術者と被験者による実証試験からは,ある程度の度合いはトレース可能ではあったが,双方には感覚や判断の個体差に起因する不確かさがあった.試作は9段階,7段階および5段階の3パターンであり,その中で7または5段階が有力な候補になった.データを増やし統計的な処理も必要と感じた一方では,施術者本位の判定も有力であることも分かった. (2)診療前後やその後の経過観察および持続的な治療効果観察では,施術前後の変化についてダブルブラインド方式よる計測からは,触診と被験者の感覚との整合性は約半分に満たなかった.要因は押込み力,圧子位置や押込み方向の再現にあり,また感覚的な判断のためあいまいさが含まれた.経過観察でも同じであった.ここでも(1)に示した,基準となる触診硬軟のサンプルモデルは必要である.この中で,データー数は少ないが,これらを解決する新たな硬軟評価につながるヒントも得られた. (3)肩こりの遠因であるとされる基礎疾患治療による硬軟との関わりについて,ボランテアによる本能性疾患で実施した結果からは,先の実証試験と同様に,変化の度合いが大きい場合には触診との整合性が高く,施術者が迷う場合には半分以下であった.遠因の治療と硬軟とは直接的な因果関係がない場合もあった.この場合でも,上記(1)のサンプルと新たな(2)の方法により,施術者と被験者の負担が軽減されることも分かった. (4)今後は,施術前後やその後の経過観察,持続的な治療効果の観察が分かり易いシステムの構築,被験者の基礎疾患治療と肩こりとの因果関係に関わる実証試験データー数を増やし臨床との共同による肩こり遠因との相関の強さを確かめたい.その先には,医療福祉関係,競技スポーツ関係,および一般家庭など広範な活用に貢献する新たな筋硬度計測システムの提案がある.
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