研究概要 |
脳卒中の後遺症として片麻痺が残る場合,歩行時に足のつま先を上げることができない下垂足を生じる.この下垂足に対する歩行再建法として,機能的電気刺激(FES)を用いた筋制御法によってつま先を引き上げ,歩行障害を改善する方法がある.従来,このFESにおける遊脚期のタイミングの識別は,足底に装着した接触型センサのON/OFFフットスイッチによって行われていた.そこで,患者側の足底の違和感や電気コード類の巻き付けを取り除くために,接触型センサの代替えとして,本研究では非接触型センサである3軸の加速度センサ,ジャイロセンサを膝下部に取り付け,それらのセンサ情報とパターン解析が得意なニューラルネットを組み合わせることで,歩行中の遊脚期情報を推定し,FESのための新しいスイッチング技術を試みた. 平成24年度に開発予定のニューラルネットワークによる学習アルゴリズム部分の設計は,制御系設計支援ソフトMatlabを利用し計算したものである.このソフトウエアは学術的には多くの分野で利用されているソフトウエアであるが,一般的なソフトウエアでは無いうえ,個人的な導入は難しく,あまり汎用性も無くコスト高である.従って,出来るだけ患者自身でも簡単に調整が利き,学習機能を搭載したシステムとして患者に提供するために,学習機能部分もC言語で設計予定である.また,これまで開発したシステムをさらなる実用化のためにコンパクト化し,患者さんの立場に立ち,負荷にならず使い勝手がよく,さらに,歩行周期の推定の精度が向上するようなシステムになるように取り組む.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した遊脚検出期システムは,健常者に応用した場合,通常歩行あるいは下垂足を想定した模倣歩行における遊脚期,つまり,つま先が上がった状態を十分に検出できる状態にあり,実際の患者に適用しても,遊脚期の状態を検出できる期待が大きい.よって,おおむね順調に研究は進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
現状のシステムは概ね,健常者に対しては,良好な歩行周期の検出が可能となっている.また,健常者による下垂足患者を模倣した歩行による,歩行周期も概ね良い検出結果が得られている.しかしながら,片麻痺の患者さんの歩行は一様ではなく,麻痺度や患者個人の癖により様々な歩行スタイルがあり,全ての患者に適用できるのかどうかという難しさが挙げられる.今年度は,できるだけ多くの患者に適応して,その都度,フィードバックしてプログラムやハードウエアを改良し,多くのスタイルの歩行に適用できるように改善を図っていくことを考えている.場合によっては,現在,3軸の加速度センサーは膝下あたりに装着されているが,センサの装着位置やジャイロセンサーの設置数を増やすなど改良改善を重ねていきたいと考えている.
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