研究課題/領域番号 |
22560260
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北 裕幸 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (30214779)
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研究分担者 |
原 亮一 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (80361872)
田中 英一 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 助教 (10124538)
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キーワード | 電力工学 / 太陽光発電 / 分散型電源 / 蓄電池 / 系統フレキシビリティ / 周波数制御 / 電圧制御 / 余剰電力 |
研究概要 |
本研究では,電力系統を利用する新規参入事業者や需要家が,自身の小規模電源や負荷(分散型リソース)を,系統フレキシビリティの一部として積極的に提供するような環境を構築することで,系統電源と分散型リソースとが協調し,効果的に系統フレキシビリティを確保する新しい運用体系を開発することを目的として実施した.特に,太陽光発電が大量に導入された電力系統における以下の3つの課題の観点から,系統フレキシビリティを確保するための運用体系について検討を行った. (1)周波数変動抑制について(田中が担当):系統周波数の変動の大きさに応じた報奨金を提示することで,新規参入事業者や需要家がこの報奨金を動機として自発的かつ自律的に分散型リソースを制御し,周波数変動抑制へ協力する枠組みを提案しその有効性を明らかにした. (2)電圧変動抑制について(原が担当):需要家側蓄電池の有効・無効電力制御によって,従来の静止型無効電力補償装置(SVC)よりも高い電圧制御効果が得られることを明らかにした.すなわち,需要家側の分散型リソース(この場合,蓄電池)を上手に活用できれば,高い系統フレキシビリティを確保できることを確認した. (3)余剰電力解消について(北が担当):出力が不安定な多数の太陽光発電を含む配電系統において,各需要家に設置されるスマートメータ並びにそれらを連携する双方向情報通信ネットワークを用いて,各家庭における家電機器を制御することで,PV大量連系に伴う電圧逸脱問題を解決しつつ,余剰電力を解消可能な運用管理システムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,自然エネルギーシステム,特に太陽光発電が大量に導入された電力系統において,系統運用上問題となり得る課題:1)出力変動による系統周波数の変動,2)逆潮流による配電網の電圧上昇,3)軽負荷時における余剰電力の発生を取り上げ,その各々に対して一般電気事業者と多数の系統利用者とが誘導価格に基づき協調して対処する新しい運用体系を確立することを目的としている.上記3つの項目に対して,研究代表者,研究分担者が,分担して実施してきており,いずれもおおむね順調に進展している.ただし,2)の電圧変動の抑制については,分散型リソースを活用することのメリットを評価するところまでは完了したが,誘導価格を算定するところまでには至っておらず,今後重点的に実施することが必要である.
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今後の研究の推進方策 |
一般電気事業者と多数の系統利用者とからなる電力系統モデルに対して,今年度までに開発された「誘導価格の算定手法」と「系統利用者の意思決定評価アルゴリズム」を用いて,マルチエージェントシミュレーションを実行し,最終的に大規模集中電源と分散型リソースとがどのように役割を分担するのが望ましいかを明らかにする.すでに,軽負荷時における余剰電力の発生については,シミュレーション実行してきており,同様の計算を,周波数変動抑制,電圧変動抑制についても実施する.
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