本研究は、従来ほとんど利用されていない同期発電機内部の空隙磁束及び制動巻線電流を積極的に活用した新しい電力系統解析モデルを構築して、電力系統の解析並びに運用技術の高精度化に資することを目的とした基礎研究である。当初計画では、発電機内部空隙磁束を中心とした実験的研究を実施予定であったが、理論的解析モデルの構築を優先したため、次年度実施予定だった制動巻線に関する実験的検討を前倒しで行った。 本年度実施した研究内容と成果は次のとおりである。 (1) 空隙磁束の数学的解析モデルを構築し実験結果と比較しその妥当性を検証した。 (2) 電力品質を表す高調波歪みや三相不平衡をはじめとして、系統における異常な変化は、発電機内部において発電機の回転子とともに回転する制動巻線を流れる電流上に現れる。制動巻線に生じる電流を計測して、両者の関係を明確にした。また供試機の制動巻線は毎極5本の制動棒で構成されている。本数を変えた場合、極間接続の有無による、制動巻線の効果を詳細に検討した。 (3) TCSC(Thyristor-Controlled Series Capacitor、サイリスタ制御直列コンデンサ)による系統安定度向上効果について、実験と解析を行った。すなわち、本学所有の模擬送電線設備において一機無限大母線系統を構成し、購入したDSPボードを用いたデジタル制御系によってTCSCのパラメータをリアルタイムで調整することにより、系統安定度を向上させることができることを実証した。
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