研究概要 |
本研究では,次世代電力システムにおけるマネジメントシステムの高度化を目的として,(1)電力情報ユビキタスの基本となる分散型電力情報IDチップの開発と機能標準化,(2)不確実な潮流変化に自律分散的に対応できる電圧マネジメントシステムの構築,(3)電力情報に基づく設備形成のリスクークオリティマネジメントなどについて研究する.平成23年度の成果は下記の通りである. 1)小型分散型電力情報IDチップの開発と機能標準化: 昨年度の成果を基に,標準化に向けた電力情報IDチップの更なる改良を行った.ハードウェア開発については,更なる改善を図るため,試作DSPボード上で諸機能をモジュール化して標準化について検討した.また,ソフトウェア開発については,配電系統および需要家の電力設備の電力品質の変化を瞬時に正確に捉えるために周波数や高調波などの各種電力状態量をリアルタイムかつ高精度に計測することが可能な演算アルゴリズムについて改善を図り,再帰的DFTアルゴリズムのリアルタイム性を維持しながら設計周波数と入力周波数との周波数偏差に起因する演算誤差を低減する手法を提案した. 2)不確実な潮流変化に対応した自律分散型電圧マネジメントシステムの構築: 近い将来,太陽光発電が配電系統に大量に導入されることを想定して,主要なノードに設置した日射量センサー情報を用いたSVRタップ切替制御法を提案した.また,受電家に設置されているSC自動力率制御装置を有効に活用する配電系統側の電圧制御系統の協調的制御により,電源品質の改善手法を提案した. 3)電力情報に基づく設備形成のリスクークオリティマネジメント: 配電系統の等価モデルを用いて,電力情報IDチップと需要家におけるSCを用いた電圧制御への応用効果について定量的に解析し,需要家設備に自動力率制御装置を設置することの投資効果について検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目のうち,(1)電力情報ユビキタスの基本となる分散型電力情報IDチップの開発と機能標準化については,DSPボードを用いた試作での標準化検討の段階にあり,(2)不確実な潮流変化に自律分散的に対応できる電圧マネジメントシステムの構築については,既に様々なシステム制御方法について提案して検証を行っている.(3)電力情報に基づく設備形成のリスク-クオリティマネジメントについては,現在需要家設備であるSCにおける自動力率制御装置の応用効果と普及について,学外委員会を中心とした活動を展開して検討している段階である.以上のように,研究目標に対して概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
(1)電力情報ユビキタスの基本となる分散型電力情報IDチップの開発と機能標準化については,標準化のためのプラットフォームの構築に向けた研究を実施していく.(2)不確実な潮流変化に自律分散的に対応できる電圧マネジメントシステムの構築については,将来のスマートグリッドの構成要素として現行の装置を活用した近未来のシステム構成について検討を行い社会に発信していく.(3)電力情報に基づく設備形成のリスク-クオリティマネジメントについては,代表者が委員長を務める電気設備学会での委員会活動を通して投資リスクと費用対効果について定量的に検証を行い,社会での普及に向けた活動を継続的に展開していく.
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