研究概要 |
銀シース高温超電導線材の交流磁界下での損失(磁化損失)低減に向けては,超電導芯を撚り(ツイスト)構造とし,母材抵抗を向上させることで,芯間結合時定数の逆数で与えられる特性周波数f_cを,使用周波数に対し十分高い値に向上する必要がある。最初に,f_cと商用周波数域での損失低減効果の関連性を明らかにするため,純銀に対し一桁程度高い抵抗率(77K)を有する銀-金(16wt%)合金を母材とする非ツイスト多芯線材を試作し,試料長を変化させながら線材幅広面に垂直な横磁界下での磁化損失特性の77Kにて測定・評価した。f_c>100Hzに向上させることで,50Hz近傍における損失低減効果が得られ始め,f_c~900Hz程度に向上させることで,フィラメント間の電磁結合が完全に分断されたレベルまで損失が低減されることを確認した。 一方,銀-金合金は非常に高価なため,母材は純銀とし,超電導芯間に酸化物等の高抵抗層をバリア材として導入した線材(バリア線材)を開発する必要がある。ビスマス系(Bi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_x)超電導体との焼成時の反応が少なく,芯間抵抗向上に有効なSrZrO_3(加工性改善のためBi_2Sr_2CaCu_2O_xを少量混合)をバリア材とする線材を作製し,ツイスト長L_tを変化させたときの通電特性(臨界電流密度J_c)とf_c(垂直磁界下)を77Kにて評価した。L_t<10mmにおいて,f_cは100Hz以上(L_t=5mmにて約400Hz)に増加し,横断抵抗はL_tによらず純銀シース線材の15~20倍程度に向上していることが確認された。しかし,L_t<10mmとした際にJ_cは4~8kA/cm^2と大きく低下した。L_tの狭小化に伴い,外層シース材の破損や線材内の超電導芯の湾曲・断線が発生していることが確認され,これを抑制するための線材構造・加工成型パラメータの検討を行う必要がある。
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