研究概要 |
前年度の研究成果を踏まえて,焼成時のビスマス系(Bi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_x,Bi2223)超電導体との反応性が少なく,超電導フィラメント間横断抵抗の向上に有効なSrZrO_3(SZO)をバリア材とする銀シース高温超電導線材の通電特性(臨界電流密度J_c)の向上に関する研究を実施した。SZOは延性に乏しく,バリア材として使用した際の線材加工性の低下による超電導芯の変形不良や断線,シース材の破損が課題であることを確認しており,その克服に向けて,(1)超電導芯間に導入するSZOバリア厚,(2)線材の加工成型パラメータ,(3)Bi2223相形成のための焼結条件(温度時間)の最適化に注力した。その結果,低交流損失化の際に必要となるツイズト(撚り線)構造を導入していない線材(非ツイスト線材)にて,J_c=25-26kA/cm^2(77K,自己磁界下)を得ることができた。このJ_c値は,当研究室にて同一条件で作製したバリアを導入していない非ツイスト線材と同レベルである。 一方,.ツイスト構造と複合化した際の4劣化を抑制するために,線材幅を一般的な4mmから2.7mmにスリム化することを試みた。4mm幅線材では超電導芯の断線やシース材破損等により完成線材でのツイスト長を8mm以下に低減することが不可能であったが,2.7mm幅線材では,ツイスト長を4-7mm程度まで狭小化した場合においてもJ_c=16-23kA/cm^2(77K,自己磁界下)を得ることができた。作製したSZOバリア線材の芯間横断抵抗を評価した結果,非バリア線材と比較して一桁以上向上しており,高J_c化と高横断抵抗化が両立できていることを確認した。
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