研究概要 |
超電導ケーブルの素線として使用される銀シース高温超電導線材は、交流磁界と交流電流が同時に印加される環境下で使用されるため,交流電流による損失(通電損失)と交流外部磁界による損失(磁化損失)が相伴って発生する。全損失に対する磁化損失の割合は印加磁界振幅の増加と共に増大するが,その低減には多芯化された超電導フィラメント間に生じる電磁結合を抑制する必要がある。そこで、磁化損失の大幅低減を目的として,3年間にわたり推進した、超電導フィラメント間に酸化物バリアを導入した低損失銀シース線材の開発研究に関する総括を行った。 研究の成果のひとつとして、SrZrO_3バリアを導入し、バリア厚、線幅およびツイストピッチを制御することで、臨界電流密度J_c>10^4A/cm^2(77K,自己磁界下)を維持した上で、超電導ケーブルへの応用に重要な結合周波数f,を、最も厳しい条件である線材面に垂直な横磁界下において、250Hz以上に向上できることを示した。またバリア入り線材において、同一寸法でフィラメント同士が完全に電磁結合した線材と比較して、商用周波数域で40-50%程度の垂直磁界損失の低減を確認した。さらに磁化損失の発生要因を電磁気学的に考察するため、f,>250Hzを有するバリア線材の垂直磁界下での交流損失特性を系統的に評価し、フィラメント聞結合特性および商用周波数域での損失低減の阻害因子を調査検討した。加えて、低損失超電導ケーブルの実現に不可欠な低損失銀シース線材の製作に係る技術的指針の検討を行った。
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