近年、超電導直流電力ケーブルは交流電力ケーブルと同様に研究されている。超電導直流ケーブルの実用を考える場合、交流電流を直流に変換する必要がある。ほぼ完全な直流にするためには、交直変換におけるリアクトル部に大きなコストがかかる。もし、リアクトル部のコストを抑えた場合、交流リップル成分が残留することで交流損失が発生し、その熱を除去するための冷却システムのコストが高くなる。従って、リアクトル部のコストと冷却システムのコストのバランスで、ケーブルシステムの構成が決定されることになる。このため、どの程度の交流リップル成分によってどの程度の損失が発生するのかを明らかにすることが必要である。 今年度は、超伝導円柱に対して直流電流に交流リップルを重畳した電流通電をした場合について理論的な検討を行った。臨界電流密度の磁場依存性についてはIrie-Yamafujiモデルを用いた。その結果、交流リップルが重畳された直流電流を送電した場合の損失は、交流リップル成分の振幅で交流電流をそのまま流した場合の損失よりも大きくなるということがわかった。さらに、特殊な場合ではあるが、通常の交流電流に比べて損失が低減される条件があることがわかった。 またこのことを数値的に調べるために有限要素法を用いて同様な計算をすることにより、理論値と一致することを確かめた。このことにより、任意形状の際に交流リップル成分による損失を計算することができるめどが立った。
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