電子機器のプリント回路基板からの電磁放射の原因の1つとして、電源グラウンドプレーンからの放射が知られている。この放射はプレーンが共振するときにピークを持つ。そこで、電源グラウンドプレーン間に抵抗とキャパシタ(抵抗付きキャパシタ)を直列に接続することで、プレーン共振を抑制する方法を検討している。これまでに、抵抗付きキャパシタを有効に利かせるための接続位置や抵抗値などについて検討してきた。その結果、基板の4隅に配置し、抵抗値は数Ω程度が適当であることが分かった。今年度は、抵抗を接続することで増加してしまうと考えられる損失について検討を行った。 平行平板構造の電源グラウンドプレーンを持つ4層基板を想定し、四隅に抵抗付きキャパシタを接続したモデルを作成し、抵抗値を0~1MΩと変えた。この基板の電源グラウンド間に正弦波信号を入力し、入力電力Pinと抵抗で消費された電力Pc、放射電力Prをシミュレーションにより計算した。このとき、基板の消費電力をPbとすると、Pin=Pb+Pc+Prの関係となる。ただし、Prを計算したところ、全体の1%程度であったため、検討からは除外した。 基板の共振周波数においてPbとPcを比較したところ、抵抗Rを大きくするにつれてPcの増加に伴いPinが増加していった。さらにRを増加させるとPcは飽和しやがて減少に転じるが、Pbが増加し始め、Pinは増加の一途をたどった。一方、基板の反共振周波数では、Pbはほとんど生じず、Pcだけが発生した。この結果から、共振抑制のための抵抗は大きすぎると損失を増加してしまうので、効果のある範囲でなるべく小さい値のものが望ましいことが分かった。また、抵抗を挿入することで反共振時や共振以外の周波数でも、小さい値ながら損失が生じてしまうことがわかり、この点からも小さい抵抗が望ましいと考えられる。
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