研究概要 |
極短高電圧パルス発生器として複数のブルームライン線路やマイクロ秒以上のパルス発生装置として半導体スイッチによるRC放電回路を製作し,15ns~数十μsまでの矩形波パルスを出力できる実験システムを構築した。また,実験効率をあげるために新しく反応容器を設計製作した。 この実験システムを用いて,産卵した日のヒメダカの受精卵を試験対象としてその周囲に配置された化学物質の導入実験を行った。今年度は,化学物質として主にタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)を用い,コントロールに対する成長の遅れを観測することにより,化学物質の導入の有無を調査した。高すぎる印加電圧では卵内部は死滅するほどの電気的ダメージを受け,一方,低すぎる電圧では特に顕著な影響は確認されなかった。その中間程度の電圧を印加すると,シクロヘキシミドが導入されたことに起因すると思われる成長遅れが見られる試験体が観測された。このとき,卵内部に対する電気的影響はほとんど確認されなかった。 印加する矩形波パルスのパルス幅と電圧の組み合わせにより,シクロヘキシミドの導入が確認される試験体の割合は変化し,導入割合が試験体総数の80%以上となる印加パルス条件が判明した。このときエネルギー効率の観点からみたとき,最適なパルス条件(100ns,1.2kV)があることも分かってきた。 本年度は,高い導入割合を維持しながら,物質の導入量を増加することを目標とした実験をおこなっていく。また,シクロヘキシミド以外の物質についても導入実験を行っていく。
|