研究概要 |
電解重合法による導電性高分子合成の特徴的な成長形態について検討している。成長形態はラジカルカチオンのカップリング反応, それに続く脱プロトン化反応と深く関係し, 使用する支持電解質や溶媒の種類や濃度によって劇変することがわかっている。成長形態は, 重合電流およびモノマー濃度を変えることにより容易に制御でき, 広葉状パターンあるいは針葉状パターンとすることができる。しかし, 重合形態と溶媒のドナー数やアクセプター数など極性を示す物理量との関係は明確にできなかった。これら重合形態を制御し, 広葉状および針葉状のパターンを組合せながら接続することによりバイオ回路の作製が可能である。しかし, 重合体の形成が始まる生体親和性の優れた導電性高分子, 例えばポリピロール, PPyは環境安定性に優れ, ドープ状態が安定で,高導電率を有しているので, 好都合であった。このバイオ回路と電界発光素子を組み合わせた素子を作製し, 発光特性を調べた。バイオ回路は有機材料でできた電気回路であり, 素子駆動用の回路として充分機能することが分かった。広葉状の導電性高分子をニューロンの核部に対応させると, 針葉導電性高分子はニューロンの樹状突起(軸策)とみなせる。この知見をもとに特定の枝を選択的に成長させ, 針葉状導電性高分子の先端同士を接触させることができる。電気化学的手法によるドーパントの制御, すなわちイオンの出し入れは容易であることが知られている。針葉状導電性高分子はニューロンの軸策に対応するので, 核部に対応する広葉状導電性高分子との間でシナプス類似の働きをさせることができる。この場合, ネットワークを流れる信号に応じて針葉状導電性高分子の導電率が変化するなら, シナプスを介して情報の授受, 学習効果が付与される。
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