研究課題
MgSe/BeZnTe超格子のClドーピング特性を調べた。ドーピングする層を変えながら試料を作製し、二次イオン質量分析(SIMS)及びフォトルミネッセンス(PL)測定、C-V測定により評価した。超格子の全層に均一ドーピングした場合のSIMSによるClドーピング濃度は1×10^<18>cm^<-3>以上の高濃度であったのに対し、BeZnTe層のみに変調ドーピングした場合は10^<16>cm^<-3>台であった。これより、BeZnTe層のClの取り込みがMgSe層に比べ低いことが分かった。一方、変調ドーピング試料のPL発光特性はノンドープの場合と同様であったのに対し、均一ドーピングでは超格子からの発光が確認できず、高濃度Clドーピングが発光特性に大きく影響することが示された。しかし、これらの試料のC-V測定からは明瞭なn型化が確認できなかった。これはドーピングされたCl原子の活性化率が低いためと考えられる。この結果を受け、BeZnTe層に高n型ドーピングを施したZnSe薄膜層を周期的に挿入する手法を試みた。BeZnTe層6分子層毎にClドープZnSe層を3分子層挿入した試料を作製し、C-V測定を行ったところn型化の兆候が示された。次にこの手法をデバイス作製に応用した。BeZnSeTe活性層をMgSe/BeZnTe超格子バリア層で挟み、pクラッド層にNドープMgSe/BeZnTe超格子、nクラッド層にClドープMgSe/ZnCdSe超格子を用い、n側バリア層とnクラッド層との間に先のBeZnTe/ZnSe層を挿入した構造を作製した。素子を電流注入により評価したところ、BeZnTe/ZnSe層のない場合に比べ注入できる電流密度が5倍以上(約300A/cm^2)に改善し、554nmの黄緑色発光が観測された。これによりBeZnTe/ZnSe層が活性層へのキャリア注入効率の改善に効果的であることが分かった。
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: 50 ページ: 031201-1-031201-8