研究課題/領域番号 |
22560301
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
野村 一郎 上智大学, 理工学部, 准教授 (00266074)
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キーワード | 酸化インジウムスズ / レーザ / クラッド層 / 超格子 / スパッタ法 / 導波路 / 光閉じ込め / II-VI族 |
研究概要 |
酸化インジウムスズ(ITO)のクラッド層への応用について検討した。レーザ構造におけるpクラッド層の一部をMgSe/BeZnTe超格子からITOに替えることで充分な光閉じ込め効果と素子抵抗の低減を目指した。ここでは先ず、理論解析によりITOをpクラッド層に用いた場合の導波路構造や光閉じ込めについて検討した。その結果、バリア層等の層厚を調整することで高い光閉じ込め係数が得られることが分かった。例えば、活性層厚を30nmとした場合10~20%の光閉じ込め係数が求められた。また、光の横方向閉じ込めについて検討した結果、ITOをストライプ状に形成した素子構造において単一横モード制御が可能であることが分かった。次に、スパッタ法を用いて実際に発光素子上にITOを成膜し、効果や影響を調べた。発光素子は、活性層にBeZnTe/ZnSeTe超格子、nクラッド層にMgSe/ZnCdSe超格子、pクラッド層にMgSe/BeZnTe超格子を用いた構造とした。この素子上にITOを成膜したものと、比較のために通常の金電極を施したものを作製し、電圧電流特性及び発光特性を評価した。その結果、ITOを成膜した素子の発光特性は金電極のものと同程度であり、ピーク波長580nm近傍において良好な黄色発光が観測された。しかし、ITO素子の場合は電流が流れ始める立ちあがり電圧が高いことが分かった。これはITO成膜時の加熱(300℃)やイオン等による影響でII-VI族結晶とITO界面に何らかの高抵抗層が形成されたためと考えられる。以上より、II一VI族結晶とITO界面での問題が残されているものの、ITOをクラッド層に応用する基礎的条件は確立されつつあり、緑色レーザの実現に向けて大きな進展が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
緑色レーザに向けたクラッド層材料の開拓において、高抵抗のpクラッド層の代替材料として酸化インジウムスズの応用の可能性が示された。実際に発光素子を作製し良好な発光特性を得ていることから、レーザの実現が視野に入りつつある。
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今後の研究の推進方策 |
酸化インジウムスズ(ITO)のpクラッド層材料への応用展開を推進する。発光素子に応用した場合の立ち上がり電圧の増加の問題を解決するためにITOの成膜条件の最適化を進める。一方、最終的にITOでは充分な特性が得られない場合の対策として、従来のMgSe/BeZnTe超格子の低抵抗化に向けた新たな手法も並行して検討する。また、nクラッド層から活性層へのキャリア注入についても、タイプIIヘテロバリア抑制のためのグレーデッド超格子の最適化を行い、注入効率の向上を目指す。緑色レーザ実現に向けて以上の方策を効率良く推進していく。
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