研究概要 |
平成22年度は、1.同一箇所の繰り返し高分解能観察、2.磁化状態変化量の高精度抽出、および3.磁化反転特性観察を検討した。 1.同一箇所の繰り返し高分解能観察 磁気力顕微鏡(MFM)の観察試料に機械的手段で粗傷マーク形成し、さらにダイヤモンド被覆探針で高精度マークを形成する方法、および原子間力顕微鏡(AFM)観察技術を組み合わせることによって、nmオーダで再現性良く同一箇所の繰り返しMFM観察を行う技術を開発した。垂直磁気記録媒体に温度や外部磁界を作用させた場合の磁化状態変化の観察に今回開発した技術を適用し、その有効性を確認した。また、MFM観察に用いる探針の先端曲率半径と被覆磁性材料に着目し、これらの要因がMFM観察の分解能に及ぼす影響を系統的に調べた。この結果、MFMの観察分解能を10nm以下に向上する技術を開発できた。これにより、1Tb/in^2クラスの超高密度磁気記録媒体の磁化状態観察への展望が開けた。 2.磁化状態変化量の高精度抽出 観察分解能に優れるAFM像を参照してMFM像の同一箇所を高精度判定できる。AFM像を参照して同一箇所の磁化状態変化を観察した複数枚のMFM像の間の差分像を得ることにより、記録磁化状態の変化を高精度で抽出することが可能となった。ディスク表面に浅いスクラッチが存在する場合、外部磁界や温度が変化した時に垂直磁気記録媒体の記録磁化状態安定性に及ぼすスクラッチの影響を高精度で測定できた。この技術は数十nm以下の微細な磁化状態変化を観察するのに極めて有効である。 3.磁化反転特性観察 磁気ドット径30nm,ピッチ60nmのパターンメディアの磁化反転特性測定を、上記1, 2の技術を用いて行った。試作パターンメディアの平均磁化反転強度、反転強度の分散計測を行った。この観察技術は、数Tb/in^2の超高密度磁気記録の実現が期待されているパターンメディアの研究開発で有効活用が期待される。
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