研究課題/領域番号 |
22560302
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
二本 正昭 中央大学, 理工学部, 教授 (70384732)
|
キーワード | 磁気力顕微鏡 / 磁気記録媒体 / 磁化状態 / 観察分解能 / パターンメディア |
研究概要 |
平成23年度は、1.同一箇所の繰り返し高分解能観察、2,磁化状態変化量の高精度抽出、3.磁化反転特性観察、4.媒体試料に温度、磁界、応力を加えた場合の磁化状態変化の観察、を検討した。 1.同一箇所の繰り返し高分解能観察 昨年度に開発した技術の高度化を図り、nmオーダで再現性良く同一箇所の繰り返しMFM観察を行う技術を開発した。この技術を磁気力顕微鏡の観察分解能向上に関する研究に適用した。標準サンプルの同一箇所を異なる磁性探針で観察した結果をベースに同基準で探針の分解能比較を行った。この結果、MFMの観察分解能を10nm以下に向上できる磁性探針技術開発の基礎を構築することができた。また、この技術により磁性探針の反転磁界評価も可能となった。 2.磁化状態変化量の高精度抽出 AFM像を参照して同一箇所の磁化状態変化を観察した複数枚のMFM像の間の差分像を得ることにより、記録磁化状態の変化を高精度で抽出することが可能となり、ディスク表面にスクラッチが存在する場合、外部磁界や温度が変化した時に垂直磁気記録媒体の記録磁化状態安定性に及ぼすスクラッチの影響を調べた。この結果を学会で発表し、学術論文として発行した。 3.磁化反転特性観察 磁気ドット径30nm,ピッチ60nmのパターンメディア磁化反転特性測定を、上記1.と2.の技術を用いて継続評価した。試作パターンメディアの磁性ドット磁化反転挙動を調査し、試作媒体の改良に反映することができた。この技術を経産省が主催する国家PJ推進に適用し、ビットパターンメディアによる2Tb/in^2記録密度実現の見通しを得るのに貢献することができた。技術内容等をシンポジウムの招待講演として発表した。 4.温度、磁界、応力を加えた場合の磁化状態変化の観察 面内磁気記録媒体および垂直磁気記録媒体に温度、応力が加わった場合の記録磁化状態変化を高分解能磁気力顕微鏡で調べた。この結果、磁気記録状態の安定性は垂直磁気記録媒体の方が優れていることなどが明らかになった。研究結果を学術論文として発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3年間(H22-24)で行う研究目的として、1.同一箇所の繰り返し高分解能観察、2.磁化状態変化量の高精度抽出、3.磁化反転特性観察、4.媒体試料に温度、磁界、応力を加えた場合の磁化状態変化の観察、の4項目を掲げた。H23年度終了時点で当初の技術目標の80%程度を達成することが出来ている。1.の技術項目検討が、幸運にも恵まれて予想外にスピーディーに進展したこと、また、費用節約のために研究室で磁気力顕微鏡探針の作製を行なうようになり、多くの探針を実験で使用できるようになり、この結果研究加速が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度も継続して当初の研究目標に取り組むが、以下の2点を追加検討課題として研究する。5.磁気力顕微鏡の観察分解能8nm以下の実現、6.磁気力顕微鏡用の探針の反転磁界計測技術の開発と1kOe以上の高反転磁界を持つ磁性探針の開発指針確立、を目指す。高分解能で高反転磁界を有する磁性探針の開発は、高密度磁気記録媒体分野のみならずエネルギー関連の永久磁石膜開発分野などでも強く求められている。関連分野の最新の技術動向を考慮しながら、研究を推進する。
|