研究概要 |
本研究の目的は、アモルファス窒化カーボン(a-CN_x)の液相合成技術を確立し、次世代LSI用low-k層間絶縁膜への応用可能性を検証することである。本年度は不活性雰囲気中で堆積したa-CN_x膜の組成や不純物の評価を行い,さらに堆積した膜表面に電極を形成して抵抗率や比誘電率等の電気的特性を評価した. (1) a-CN_x膜の不純物制御と基礎物性評価 アクリロニトリル中で堆積したa-CN_x膜の組成をX線光電子分光で調べ,膜中に多量の酸素やNaが混入することがわかった。そこで、不活性ガス雰囲気中でa-CN_xの合成を行い、膜中の酸素が減少することがわかった.さらに,反応溶液中で電界処理を行うことで,膜中の不純物濃度が大幅に低減することがわかった.Naのようなアルカリ金属は電子デバイスの特性を劣化させることが予想され,これらの不純物の混入を防止する方法を見出したことは,電気電子材料の液相合成技術を確立する上で重要な知見となった. (2)a-CN_x膜上への金属電極形成 液相中で堆積したa-CN_x上にAl電極を蒸着して金属-絶縁膜-半導体(MIS)構造を形成し、抵抗率や比誘電率等の測定を行った。堆積した膜の抵抗率は10^<16>Ωcm以上であり,層間絶縁層として十分な絶縁性であることがわかった.さらに,容量-電圧(C-V)測定から比誘電率を求めたところ,k=2.4という最小値が得られた.これは従来報告されてきた窒化ホウ素系,SiCOH系,ナノダイヤモンドなどの比誘電率と比べても遜色ない値であり,液相中で堆積したa-CN_x膜のlow-k絶縁膜としての適性を示している.今後,a-CN_x膜に対して適切な堆積後処理を施し,結合状態の変化や多孔性を付与することによって,さらに低い誘電率を得ることが期待される.
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