研究概要 |
本研究の目的はアモルファス窒化カーボン(a-CNx)の液相合成技術を確立し、low-k層間絶縁膜への応用可能性を検証することである。これまでにアクリロニトリル中で合成したa-CNx膜が従来の酸化膜よりも低い比誘電率(k<3)を示すことを明らかにしてきた。 今回は、アセトニトリルやN,Nジメチルホルムアミド等の様々な反応溶液による合成実験および物性評価を試み、層間絶縁層に必要な低誘電率(k<2)を得るための成膜プロセスを検討した。いずれの反応溶液においてもアモルファス状の薄膜が堆積し、このうちアクリロニトリルやアセトニトリル中で堆積した膜は窒素を20%以上含有するa-CNxであり、一方でN,Nジメチルホルムアミド中で堆積した膜は窒素を含まないa-Cであることが確認された。それぞれの膜の電気的特性を測定したところ、アクリロニトリル中で堆積した膜が最も高抵抗かつ低誘電率であることがわかった。さらに、高分解能電子顕微鏡等により膜の微細構造を観察したところ、アクリロニトリル中で堆積したa-CNx膜が微細な空孔からなる多孔質膜であり、空孔のサイズや密度が合成時のパラメータに依存することを明らかにした。現時点までに目標とする比誘電率(k<2)を得ることはできなかったが、合成反応中および堆積後の処理により膜の微細構造を制御することで、抵抗率や比誘電率等の電気的特性を実用レベルまで改善できると考えている。 さらに本研究課題の最終年度にあたり、新たな研究シーズの探索として、液相合成したa-CNx膜の発光特性についても実験を行った。暗室中でa-CNx膜に紫外光を照射したところ、波長550nmを中心とする緑色の波長域で強い発光(PL)が観測された。まだ電気的なキャリア注入による発光(EL)を実現するには至っていないが、これらの結果はa-CNxの発光デバイス材料としての可能性を示唆している。
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